注文住宅の中には、フルオーダーとセミオーダー、企画住宅方式があります。セミオーダーと企画住宅方式は、ほとんどの部分がメーカーや工務店任せなので、考える事も決める事も少なく、予算オーバーもあまりありません。
しかしフルオーダー式の注文住宅は、自身で考え決める事が多く、予算はピンキリですがオーバーすることがほとんどです。
ちなみに私は、フルオーダーで最初の予算内でほぼ納めることができました。「優先順位」をブラさなかったことが一番のポイントだと感じます。しかし、もう少し考えるべきだったのは、のちにかかる諸経費や家電などのこと。それを考えておけばもう少し抑えられたかなと思います。
注文住宅を建て、その後数年住んでみて「こうしておけばよかった」という後悔もありません。
この記事では、私の経験も含め、
- 注文住宅で予算オーバーしてしまう原因
- 注文住宅で予算オーバーした場合の9つの対処法
- 注文住宅が予算オーバーしても削ってはいけないもの
- 注文住宅で予算オーバーしたら補助金も活用する
などを紹介していきますので、参考にしてもらえますと幸いです。
注文住宅で予算オーバーしてしまう原因
まずは注文住宅で予算オーバーしてしまう主な原因を紹介していきます。
本体費用だけを見てしまう
注文住宅を依頼する時に最初にざっくりとした見積もりをもらいます。その時に本体費用だけをチェックしていたら、あとで大幅に予算オーバーしてしまうというケースが非常に多いです。
家を建てるためには、家の本体の費用だけでなく諸経費、様々なオプション、土地、家具家電など別にかかってくるものがあるのです。
例えば諸経費は、物件価格の5~8%かかります。内容は、印紙税、登録免許税、不動産取得税、住宅ローン保証料、司法書士報酬などです。これらを予算に最初から組み込まないと予算をオーバーしてしまいます。
司法書士への報酬については、司法書士に依頼する事柄の中から自分でできるものを自分ですると少し安く済みます。例えば、土地購入の際の売買契約です。司法書士事務所の指定の旨の特約がないことと、現金で土地を購入する場合には自分で手続きができ、司法書士への報酬はかかりません。その場合は、所有権移転登記等を自分で申請する形になりますがそんなに難しくはありません。
そして、オプションは、「プラスアルファなんて贅沢言わない」と思っていても、基本的に付いていて当たり前だと思い込んでいるものがオプションである可能性もあるのです。
自分たちの優先順位がない
家づくりにおいて自分たちの優先順位がないと、必ず予算はオーバーします。
なぜなら、のちのち提案してもらえるものがすべて魅力的、必要な気がして、「あれもこれも」と取り入れてしまうからです。
例えば優先順位①住み心地②導線③予算④デザインと決めていたとします。
のちの提案で、快適に安心して住みたいため、耐震の強さや断熱、冷暖房の種類などは良い物を取り入れます。デザインが多少思ったようにならなくても、導線を優先をします。
優先順位があると、決めていく時に迷いが生じる必要がないですし、迷っても原点に立ち返ることができるのです。
住んだあとの費用を知らない
実際に住んだ後、かかってくる費用を念頭に置いておかないと、総合的に予算オーバーになりかねません。
住んだ後にかかってくる費用で代表的なものが固定資産税。注文住宅の話し合いの時に、リビングの大きさを広くしたり、勝手口をつくるなど予算内だからしよう!と決めてもその場の費用だけでなく、広くした分、追加した分、毎年支払う固定資産税が上がります。
また、家は一度建てればローンを支払っていくだけで終わりと考えがちですが、実際数年すれば修繕費がかかってきます。経年劣化により必ず修繕が必要になるので、それも念頭に入れておく必要があります。
あとは、ランニングコストの部分。
例えば、快適に過ごしたいから「床暖房」を採用することがあります。実際、冬が温かく過ごしやすくて快適は得られます。しかし床暖房の電気代がどのくらいか知らず、電気代請求がきて目を丸くしなければいけない事態に陥り、その後、床暖房を使用しなくなったという経緯があります。
せっかくつけたのにもったいないですよね。
このように住んだ後にかかるランニングコストを念頭に置きながら家づくりを勧めなければ後で後悔することになります。
金銭感覚がおかしくなっている
家を買うということは、一生のうちで一番大きな買い物になる人が多いでしょう。家づくりをする上で、数千万円単位の話をします。そういう単位で話をしていくと、時間の経過とともに金銭感覚がおかしくなります。
普段なら10,000円が高いと考え洋服を買わないのに、家づくりの10,000円はまるでいつもの1,000円のように感じて、こんな安いならつけてしまおうなど麻痺をしてくのです。
費用の相場を知らない
工務店やメーカーの言われるがままに話を聞いて、家を建てたことがない自分たちの感覚で決めていくと費用は確実にあがります。
今はネットやSNSでいろんな人たちの家づくりが公表されています。なるべくたくさんの情報を得て、費用の相場をチェックしておくことが大切です。
もちろん家の本体の値段もそうですが、オプションの費用も相場をチェックしておくと良いでしょう。
注文住宅で予算オーバーした場合の9つの対処法
注文住宅は、1から作り上げるので自分の理想通りの家が作れる分、予算もオーバーしがちです。細心の注意を払いながら打ち合わせをして、どうしても予算オーバーしてしまった時の対処法を9つ紹介していきます。
床面積を減らす
予算をオーバーして、大きく費用を減らしたいなら、床面積を減らすのが手っ取り早いです。
例えば、2階の床の一部を取り除いて吹き抜けを採用する、リビングの畳数を減らす、和室を無くすといった方法です。単純に施工の部分が少なくなるので、費用も大きく抑えられる方法です。
床面積を減らせば、その分の材料費や工事費用が省けます。100万円単位でコストダウンが可能です。
総2階の家にする
総2階というのは、「1階と2階の面積が同じである家」です。作りがシンプルです。基礎の面積が狭くなるので基礎の工事代金が安くなります。
費用にして数10万~100万円あたりでコストダウンが可能です。
デメリットは1階の部屋の広さや数を制限されることです。しかし総2階の家は、地震にも強く、雨漏りもしづらい構造になっているので、メリットも大きいですよ。
窓の数を減らす
窓の数を減らす、もしくはサイズを小さくするとコストダウンができます。
窓の数を減らすときには、「開け閉めを本当にするかどうか?」「採光がこの場所に必要か?」という観点で考えてください。
例えば、風呂場には窓が必要だと思い込んでいるけど、風呂乾燥機があれば必要ないのでは?クローゼットの窓はいつ開ける?西日は入らなくて良いのでは?
設計士さんは各部屋に必ず窓を設置します。しかし必要だとしても開閉でないfix窓に変えたりして減額できます。
実際、窓を減らすことで、防犯やプライバシーが守りやすい家にもなりますよ。
ちなみに窓を減らすと約5~約15万円コストダウンできます。
水回りはワンフロアにまとめる
水回りをワンフロアにまとめると、排水の構造がシンプルになり余計な費用がかかりません。それにワンフロアにしておくことで、メンテナンスもスムーズにできるようになります。
主に風呂、洗面、洗濯機がひとつにまとめやすい部分なので検討してみてください。
洋室のクローゼットは扉をなくす
洋室のクローゼットの扉を無くすとコストダウンが可能です。
家の扉を改めてチェックしてください。その部分に扉は必要でしょうか?例えば、ファミリークローゼットと部屋の間は好きな柄のカーテンを突っ張り棒でつけることで目隠しができますし、換気の面からも扉は必要ないとも考えられます。
クローゼット部分のクロスをカラーや柄にしてアクセントにすることで、扉をなくしみせるかたちにするのも1つの方法です。
扉を一枚減らすことで3~5万円カットできます。
ちなみに引き戸と開き戸では、開き戸の方がコストが高いので注意してください。
設備・性能を見直す
注文している設備や性能を見直すことで大幅ダウンも可能です。
例えばキッチンのグレードは数段階ありますが、ここにこだわりを捨てるだけで100万円近くコストダウンできます。そのほか、水回りの素材のランクや水栓のシャワー機能や浄水機能など見直しができる点があります。
その他であれば「施主支給」をすることです。例えばエアコン、照明などメーカーに依頼すると高いけど、自分たちで用意すれば安く済むということがあります。
例えば中古専門店や中古販売店でも充分なものがあるので、そういうものを自分たちで手配すれば費用は削れます。しかし、工事費や設置費だけはかかるかもしれませんので注意しておいてください。
その他、外構やカーテンなど、あとから付け足すことができるものを、住んでみてから考えても良いかもしれません。
希望居住エリアを見直す
注文住宅でどうしても家の内部、家本体にこだわりが合って譲れない場合、広い視野をもって希望居住エリアを見直すのも一つです。
ここも大幅に削減できるポイントです。
希望居住地も優先順位が必要です。子供の学区、仕事場と近い、実家と近いなど、自分たちの優先順位を明確にしてください。そして、子供の学区は絶対死守して、その他は少し遠くなってもOKと範囲を広げてみる事で、安価な土地が手に入るかもしれません。
施工業者を見直す・相見積もり
注文住宅で、打ち合わせをしていくうちにかなり費用がオーバーしたなら、施工業者の見直しや合い見積もりを取ってみましょう。
現時点で依頼している業者に申し訳ないと感じる部分もありますが、でも一生に一度の大きな買い物です。そこに遠慮は必要ありません。
工事が始まり引き返せなくなってからでは遅いので、積極的に相見積もりや施工業者の見直しはしていきましょう。
設備のグレードを落とす
設備のグレードを落とすことも可能です。
あらゆるものにグレードがあり、床素材、窓素材、お風呂、トイレの仕様、断熱、キッチン、玄関ドアなど多くあります。
例えば今決めているお風呂のグレードを一段落とすだけで生活の質は変わりますか?一番のこだわりがお風呂ということであれば、それは落とさないで他の部分を検討したらよいでしょう。
どうしても!のこだわりでなく、「できればこれが良いけどこれでなくても良い」と思えるもののグレードを落としていきましょう。
庭はDIYする
昨今、流行しているDIYですが、これを機にチャレンジしてコストダウンを図ってみてはいかがでしょうか?
庭は欲しいけど、生活するうえで必要不可欠なものではありません。それにすぐに必要なものでもありません。
住みながらゆっくり自分の理想のお庭を作り上げていくほうが、思い入れも強くなりますし、施工費も材料費も確実にコストダウンできますよ。
注文住宅が予算オーバーしても削ってはいけないもの
注文住宅の打ち合わせをしていると、最初は理想が膨らみ予算が大幅にオーバーするのですがその額に驚き今度はとことん削ろうとします。しかし、削ると言っても削ってはいけないものがあります。それは削って後悔することがわかっているものです。
注文住宅が予算オーバーしても削ってはいけないものを紹介していきます。
優先度の高いもの
優先度の高いものは削ると後で後悔します。だからこそ最初に優先順位を決めておくことが大切なのです。
私の例で言うと、
1.リビング25畳以上
2.家事動線
3.スチール階段
という優先順位を立てました。
他のものはグレードを下げたり、素材を変更したり工夫をし、この優先順位3つだけは、変更をしないようにすると後悔がないでしょう。
暮らすのは自分なので、ネットや人の意見に惑わされず、自分の優先順位を明確にしていくことをおすすめします。
外壁や外構
外壁や外構は一番打ち合わせの最後になるので、どうしても節約しがちになります。
しかし、外壁や外構は後で後悔しても取り返しが付かないことが多いのです。例えばキッチンやトイレなどは最悪入れ替えが可能で、コストがちょっと乗っかる程度で済みますが、外壁はやり直しできません。万が一したとしても莫大な費用がかかります。
例えば、駐車場に停める車が一台の予定だから、1台分をコンクリートにして、あとを砂利にしたとしましょう。。結果草花が生えてきて草むしりも大変、友人がきても駐車できないということで、結局コンクリート化したという例があります。この場合余計な工事費も材料費もかかるので、最初にやっておいたほうが良かったというケースがあります。
セキュリティ面
セキュリティー面は絶対に削らないでおきましょう。
命あって、安心があっての暮らしです。人通りの多い道路に大きな窓が面しているのに、目隠しフェンスをケチれば中が見え放題で中の様子を誰にでも把握されてしまいます。
鍵を二つ付けるのを一つにすることで小さい幼児の手の届くところにしかなく、見ていない間に出て行ってしまったなど、起こってほしくないことが起こります。
セキュリティー面は優先順位高くしておきましょう。
注文住宅で予算オーバーしたら補助金も活用する
注文住宅で予算オーバーしたら補助金も活用してみましょう。
まず家づくりにおいての補助金の存在を確認しておくことが大事です。自治体特有で用意されているものもあるので、自分たちに該当するものを家づくりの前に調べておくと良いでしょう。
しかし、補助金には受け取れる「条件」がありますから、該当するか確認が必要です。
いくつか紹介します。
こどもエコすまい支援事業
対象者 | 申請時、以下のいずれかの条件に該当する世帯 ・子育て世帯:18歳未満の子供がいる ・若者夫婦世帯:申請時にどちらかが39歳以下 |
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補助される金額 | 新築住宅:最大100万円 リフォーム:最大60万円 |
申し込み先 | 事業者 |
申し込み期限 | 2023年(令和5年)3月31日~予算上限に達するまで(遅くとも同年12月31日) |
新築対象住宅 | ・延床面積50平米以上の以下の住宅 ・ZEH、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Orientedといった、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス 令和4年10月1日以降に認定申請をした認定長期優良住宅、認定低炭素建築物、性能向上計画認定住宅 |
地域型住宅グリーン化事業
対象者 | グループ登録された地域の工務店によって、以下の条件に合った新築住宅を建てた方。 長寿命型(認定長期優良住宅) ゼロ・エネルギー住宅型・長期対応(ZEH、NearlyZEH) ゼロ・エネルギー住宅型・ZEH(ZEH、NearlyZEH) ゼロ・エネルギー住宅型・低炭素(ZEH Oriented、認定低炭素住宅) ※ZEH水準未満の住宅、ZEH 水準以上でも壁量計算による耐震等級1の住宅は補助外 |
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補助される金額 | 長寿命型(認定長期優良住宅):最大105万/135万円 ゼロ・エネルギー住宅型・長期対応:最大110万/140万円 ゼロ・エネルギー住宅型・ZEH:最大105万/135万円 ゼロ・エネルギー住宅型・低炭素:最大80万/110万円 |
申し込み先 | 施工会社が申請及び受け取り |
申し込み期限 | Ⅰ期:採択日~2023年11月20日 Ⅱ期:12月上旬以降 ※本補助金に登録する事業者は令和5年4月28日~6月2日までにグループ登録を行う必要がある。 |
新築対象住宅 | 高い省エネルギー性や耐久性を持つ木造住宅の購入を対象 同一地域の中小住宅施工会社や建材の流通を担う事業者が手がける住宅であること |
他にも自治体ならではのものもあるので、市役所のHPなども確認してみましょう。
まとめ
注文住宅は、1から自分の理想の家を作り上げる事ができます。
その分、計画段階で理想が膨らみ、予算オーバーになるケースは非常に多いでしょう。その時に自分たちの優先順位を振り返り、順位の高いものを優先し、ほかのもので工夫、調整していくことで予算をコントロールしましょう。
新築住宅には、国の補助金、自治体の助成金などもありますので、ぜひ活用し、予算内で理想の家を作り上げましょう。